
公務員の年功序列ってどうなの?
メリットとデメリットをくわしく知りたい。
こんな疑問に向けた記事を書きました。
公務員の実情を内部で見てきた立場から、年功序列のメリット・デメリットとこれからの方向性をお伝えします。
・仕事ができない上司がたくさんいる
・ぜんぜん仕事しない人が自分より給料高い
・どんなに仕事をしても給料が上がらない(特に若手)
若手の公務員の方は、年功序列制度に不満を持っている方も多いはず。
結論から言うと、公務員の年功序列制度は原則変わらないでしょう。
年功序列のデメリットもありますが、制度を変える方が混乱や反発がはるかに大きいからです。
詳しく解説していきます。
公務員の年功序列を取り巻く課題

年功序列の仕組み
年功序列とは、勤務年数や年齢を重視して、役職や給与を決める人事制度。
職員を長期的に雇用すること(ほとんど終身雇用)が前提になっています。
公務員の給与は法令で定められていて、勤務年数や業績に応じて俸給表の適用される区分(給与)が毎年少しずつ上がります。
参考:行政職俸給表(人事院)
国・地方自治体が直面する問題
年功序列制度が問題視されているのは、人材確保が危機的状況だからです。
特に若年層にとって、公務員の魅力の低下は著しい。
国家公務員の状況について、人事行政諮問会議がまとめた資料では以下のとおり。
・採用試験申し込み者の減少
10年前と比べ、総合職試験・一般職試験いずれも約3割減
・若年層職員の離職の増大
総合職試験採用者が200人超離職
主な背景としてあげられているのが、以下の3つ。
・生産年齢人口の減少
・勤務環境・処遇の魅力の低下
・若年層のキャリア意識の変化
地方自治体もひどい状況で、人材の奪い合いです。
価値観が多様化し、選択肢も多い若年層にとって、年功序列という安定はメリットではなくなっています。
公務員の年功序列のメリット

年功序列のメリットを4つ挙げます。
- 安定と安心感
- 将来設計がしやすい
- 離職の防止
- 組織管理がしやすい
それぞれ見ていきましょう。
安定と安心感
終身雇用のメリットにもなりますが、職員にとって安心感があります。
普通に仕事をしていれば、給与は毎年上がりますからね。
上がるペースは遅いですが、確実にコツコツ積み上がっていく。
安定志向の人にとっては、この安定感はやはり魅力です。
将来設計がしやすい
何歳のとき、どのくらいの給与がもらえるか予想できます。
つまり、年齢に応じた収入の目途が見える。
貯蓄やローン返済、家族のイベント費用など、収入を踏まえた将来設計がしやすいです。
離職の防止
年功序列は長期雇用を想定した制度です。
年齢と経験年数が上がるほど給与が増えるため、職員の離職を防止できます。
長年勤務することで、職員同士の仲間意識も高まりますね。
スキルアップなどの都合で転職しない限り、退職するメリットが少ないです。
組織を管理しやすい
経験に基づいてキャリアアップし、経験年数の多い者が部下の評価や指導を行います。
組織としては、人事評価、人材育成、職員配置を行いやすいです。
職員数の管理の面でも、基本的に定年退職分の補充として、若手を採用すればいいですからね。
公務員の年功序列のデメリット
反対にデメリットは4つ挙げます。
- 仕事しない、努力しない職員が出てくる
- モチベーションが上がらない
- 若手が離職する
- 組織力の低下
それぞれ解説します。
仕事しない、努力しない職員が出てくる
仕事をしない、向上する意欲がないという職員が発生します。
多くの公務員は目の前の課題解決にしっかり取り組んでいますよ。
が、守られた環境は、仕事をしなくても生きていける環境であることも事実。
仕事をしない人は、本当に仕事をしません。(でもクビにはならない)
こういう人を見るとこちらまでやる気なくなります。
モチベーションが上がらない
相当な使命感と熱意がない限り、仕事に高いモチベーションを保つのは難しいです。
どんなに仕事で成果を出しても昇給には大きく影響しません。同僚より少し昇給したり、昇進が1~2年早まる程度です。
逆に仕事をほどほどにしていても自動的に昇給します。
無能な管理職が発生する
そのポジションに見合った能力がない職員が、昇進して配置されることがあります。
よほどのことがない限り、年齢により係長や課長に昇進しますし、どこかには配置しないといけないからですね。
・マネジメントできない
・決断しない(相談しても意味がない)
・ハラスメント対応
・無駄な仕事を増やす
こんな上司に当たったら最悪です。

ちなみに、私は優秀な上司に恵まれました。
忙しい主要部署は優秀な人が多いです(激務ですが…)
若手が離職する
優秀な若手職員が離職しやすい構造です。
若いうちはどんなにバリバリ働いて成果を上げても、仕事をしない年上の職員より給料が低いです。
そして、仕事ができる若手はさらに仕事を任せられて激務になります。
ろくに仕事をしないで、定時で帰っていく上司・先輩を見ながら残業を続ける。
やってられなくなるのもわかります。
組織力の低下
・職員のモチベーションが上がりづらい
・無能な職員も管理職になる
・優秀な若手が離職する
構造的にこのような傾向があるため、組織としての成長は難しいです。
それでも、職員の義務感と外部からの監視(住民・メディア・議員)で組織は保たれています。
しかし、人口減少と公務員の人気の低下でさらに職員が集まりづらくなっています。
国・自治体の組織を維持していくのは、さらに厳しなっていくでしょう。
公務員の年功序列は基本的に変わらない

公務員の年功序列は基本的に変わらないでしょう。
人事評価制度の導入や専門人材の任期付きの採用など、対応策は出てきていますね。
それでも原則として変わらない理由を2つ挙げます。
- 反発・混乱が大きすぎる
- 経験値以外で職員を人事評価しづらい
反発・混乱が大きすぎる
職員の数、関係団体などを考えると現場の混乱と社会に与える影響が大きすぎます。
全国には約340万人の(国家公務員約60万人、地方公務員280万人)の公務員がいます。
現役公務員は年功序列の恩恵を受けている受益者でもあります。
大混乱と大きな反発があるでしょう。
公務員の仕事は国民の生活に直結していますので、現場の混乱は国民の生活にも大きな影響を及ぼします。
経験値以外で職員を人事評価しづらい
現時点では、人事評価で最も信頼できる評価軸が「経験年数」なんです。
理由は、次の2つです。
・誰もが納得・信頼できる客観的な評価指標がほかにない
・根拠の薄い不確定な情報で人事配置できない
私がいた自治体では、自己評価と、所属による採点評価が行われていました。
この評価は、職員の現時点の働きを評価するもので、係長や課長になる能力を持っているかどうかは判断できません。
昇進については、毎年の評価の積み重ねで判断していくことになります。
結局、経験年数という評価軸はやはり必要になります。

AIによって、職員の能力値を完全データ化できることになれば変わるかも…。
まとめ:年功序列を受け入れて、行動しよう
本記事の内容を要約します。
この記事を読まれている方は、年功序列制度についてネガティブな意見をお持ちかもしれません。
が、現状の制度に意見を持っても、個人で変えることは不可能ですよね。
状況を再認識した上で、自分にできる行動につなげてみてはいかがでしょうか。
そのままにしておくと、私みたいにモヤモヤしたまま、30代後半で離職ってことになっちゃいますよ…。
最後までお読みいただきありがとうございました。